映画「メランコリック」を観たせいでしんどい

メランコリックを観たぞ!

 

 

しんどい、、、、

違うの!話自体はポップで爽やか(?)なんだけど、私の急所に刺さりすぎてず〜〜〜っと抜け出せない。他の作品が観れない、、、しんどい、、、、

 

 

 

 

 

 

ちょっと前にTwitterで見て気になっていた作品。いつか見ようとアマプラのウォッチリストに入れて早半年。よ〜〜〜〜〜やっと観たぞ〜〜〜〜!!!!

 

おもしれ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!

 


なぁ〜んでもっと早く観なかった?ていうか、邦画だったんだね。
なんかポスターの雰囲気とか主役の人の顔立ちから韓国とかそこらの海外映画かと思ってたよ。

 

そしてもっと暗くて重たいストーリかと思ってた。

 

ぜんっぜんポップだ。

 

銭湯と殺人がテーマの割には、湿っぽさも血なまぐささもそれほどなく、カラッとした空気が漂っている感じ。

多分主人公が危機感うすうす、お気楽ライフを送っているからだと思う。


そう、この主人公鍋岡、殺人の片棒担いでいるというのに、ずっと危機感がない!
バイトする銭湯で殺人が行われているのを見てしまい、自分も殺人後の清掃をしなければいけなくなったのに、ひとつも深刻そうじゃない!

なんならやりがいを感じている。
そういう仕事を任されたことを誇りに思っている。

主人公、甘ちゃんだけど変なところで肝が座っていておもしろい。

 


この映画、何がいいって、登場人物のキャラがすごく良い。
主人公鍋岡はもちろん、鍋岡の彼女の百合ちゃん、めちゃくちゃかわいいんだ!!!!
ほんっとにかわいい!飾らない素朴なかわいさ
酔っ払って鍋岡と2人で夜道を歩くシーンなんて、それはそれはかわいい。
その上察しがよくて気が遣える。完璧じゃない。


それから、鍋岡の同僚として銭湯で一緒に働く松本。
色々感想を見たりして人気が凄いことは知ってたけど、それでもやっぱり松本に落ちる。
だって、オタクが好きな要素つめつめなんだもん!!金髪で、チャラそうな喋り方してるのに、めちゃくちゃ仕事のできる殺し屋だなんて。
正直、パッと見で目を引くようなキラキラしたイケメン!て感じじゃないんだけど、それがまたいい。話が進むにつれてジワジワと好きになっていく感じ。終わる頃にはもう抜け出せなくなっている。そして、2週間くらい経った今でもまだ抜け出せていない。助けてくれ。

それにしても、このチャラ金髪殺し屋を何考えてるか分からない掴めないキャラにしなかったのすごいね。なんかなりがちじゃん。こういう金髪黒ずくめチャラ男って、飄々とした掴めないキャラに。割と地に足着いたようなキャラなのが、またこの日常に溶け込んでいてとてもいい。

 

そう!!!この映画、整合性のないところも若干ありつつ、リアリティがすごいのだ!!!!押し寄せるリアリティに非リアリティがいい塩梅に掻き消されている!と思う!
冴えない鍋岡の演技とか、鍋岡が同窓会でサラダばっかり食べてるのとか、鍋岡と松本の会話とかすっごいリアリティ。私も陰キャなので、鍋岡のあの陰キャの感じにリアリティ感じすぎて、キチ〜〜〜〜となり1回アマプラを閉じた。
なんだかやけに機嫌の良い鍋岡に松本がどうしたんすか?と聞くシーン。
めちゃめちゃリアルじゃん?鍋岡の丁度ダルいあのノリ、ダルいノリに最後まで乗ってくれる松本の良い後輩ムーブ、間のとり方、笑い方、全部見たことあるような、やったことあるような光景。
こういうリアリティが随所に流れるから、例えば死体をただ銭湯の釜で焼くだけで大丈夫なのかとか、素人が急にヘッドショットキメられるのとか、撃たれた松本がちょちょいと手当てして数時間後にはふつうにうどん食べてるのとかの非リアリティが、まあ、私が経験したことないから分からないだけでそういうもんなんだろうな〜となってしまう。そういう整合性のなさをなんやかんや言うのが野暮ったく思えてしまうのだ。

 

 

そういうリアリティを感じるとりわけ好きだったシーン。


銭湯の店主である東さんに、ヤクザである田中を殺す決意を2人で伝えるシーン。
東「大丈夫かい?」
鍋岡「大丈夫です」
東、拳銃を手渡し
東「怖いかい?」
鍋岡「大丈夫です......大丈夫です」
東「それ、あげるよ」
鍋岡「え?!...いや...大丈夫です」

鍋岡の「大丈夫です」が段々自信なさげになっていくのがおもろいね。
日本人特有の「大丈夫」の活用をすな。


このシーンに続けて、
鍋岡「どうして今まで田中を殺さなかったんですか?」
松本「それができたら200年前にやってますよ」
東「いや、ずっとそうしてほしいと思ってたんだ」
松本「早く言ってくださいよ」
鍋岡「200年前に?(ボソ)」
松本「チッ、うっさいすよ」

急に200年前とかいう突拍子もない数字をだしてくるのとか、鍋岡が茶々入れするのとかすごくリアルじゃない?友達同士だとするよね、こういうの。そうか、鍋岡と松本は友達だったんだな、、、、

 


鍋岡、なんやかんや憎めないやつでとてもいいんだ。
彼女に別れを切り出すときに自分では言わずに彼女に言わせちゃうところとか、ほんとにどうしようもないところもあるんだけど、松本を見捨てなかったりする情に厚いところもあって、憎めない。

田中殺害決行日、何かあったら逃げてくださいと松本から言われるも、松本がピンチそうだったら迷わず拳銃を握って田中邸に乗り込む。
銃で撃たれた松本を救出したあと、車で逃げる際に急かされてブチ切れるのも、決めきれなくて愛おしい。
そして、撃たれた松本の手当をしようと運び込むのが鍋岡の実家なところも、まぁ愛おしい。寛容、というか肝の座った父さん母さんでよかったね。というのと、この親にしてこの子ありって感じだった。

作中何度か差し込まれた鍋岡家の食卓シーン。
いつも同じアングルで、父さん母さんが少し話をして、多分一番日常味あふれるシーン。銭湯で殺人の片棒担いでいても、この食卓のシーンで一気に日常に戻る。
多分この映画で「生」を担うシーンだ。
殺人、及び後処理をする銭湯のシーンが「死」を表すなら、家族揃ってご飯を食べ、明日の話をするこの食卓は「生」のシーンだろう。
田中邸でドンパチやった後に鍋岡家の3人、アンジェラ(田中の恋人)、松本で食卓を囲むシーンはその緩急がとてもよかった。食卓を囲む者たちは生きていて、生きるために食事をする。田中と東にはもう叶わないことだ。そして会話が上手い具合に盛り上がらないのも良い。リアルだ。

 

ラスト、鍋岡が雇われ店長となった銭湯に百合がやってくる。そして、銭湯で働くアンジェラ、松本、鍋岡と一緒にポテチを囲んで談笑するシーン。松本がワンカップを飲んでいて泣いちゃったよ。
殺し屋の仕事してて、酒飲むなんて飲酒運転してるようなもんですからね。って言ってた松本が、ここで酒を飲んでるのよ!!
ずっと気を張っていなくちゃいけない仕事をしていた松本が、この瞬間は気を抜いて、仲間と酒を飲んでいる。多分、松本はこの先殺し屋の仕事から足を洗えないんだろうなぁとは思うんだけど、この瞬間だけでも気を抜いていられる場所があってよかった、よかったよ。
鍋岡の最後のセリフ、
「人生には何度か、一生これが続けばいいのにっていう瞬間が訪れる。〜〜その瞬間のためだけに生きているんだと思う。その何度か訪れる瞬間のためだけに。それで十分。うん。それで十分だと思う。」
これが全てだと思う。

楽しみが無くても生きていけると言う松本、東大出たら良い仕事に就いて幸せにならなきゃいけないのかと問う鍋岡、そして百合やアンジェラにもこの瞬間が、一生続けばいいのにと思う瞬間だったら良いな、、、

 

 

とても良い映画に巡り会ってしまって、当分他の映画を見れません。